• 医療コラム
  • 2017.05.25

認知症への理解を深めよう

今年4月下旬、国際アルツハイマー病協会の国際会議が京都で開かれたのを機に、認知症への理解をもっと深めようという気運が高まっています。
日本国内では2025年には高齢者の5人に1人がなるといわれる認知症。
もはや身近な病気といえます。
 
軽度認知障害の段階であれば元に戻る可能性が
認知症とは、「脳がダメージを受けて記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障を来すようになった状態」をいいます。
“日常生活に支障を来す”とは、
例えば散歩に出かけたけれども家への帰り方がわからなくなった、暑い日にもかかわらず冬のコートを着ている、といったようなことを指します。
同じ年代の高齢者に比べるともの忘れなどが多いけれど、かといって生活に支障が出るほどではない、という状態は「軽度認知障害」といい、
予防対策などにより認知症への移行を防げることがあります。

治る認知症もあるので、疑われるときは早期受診を
認知症の定義に当てはまる状態をつくる病気は100以上あるといわれています。
中でも患者の数が最も多いのがアルツハイマー病で、軽度のときから、数時間あるいは数日前にあったことを思い出せないなどの症状がみられます。
次に多いのが脳梗塞や脳出血などで引き起こされる脳血管性認知症で、うつ症状がよく現れます。
最近注目されているのがレビー小体型認知症で、存在しないものが見える幻視が特徴的な症状です。
これらの認知症を根本的に治す方法はまだ見つかっていません。
その一方で、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などのように、治療により元の状態に戻せる可能性のある認知症もあります。
大切なことは早期に専門の医療機関を受診し、認知症の原因となっている病気を見つけ、その病気に応じた治療やケアを受けることです。
「物の置き忘れが増え、よく探し回る」「同じことを何回も話す・尋ねる」
「何もする気が起きない」「怒りっぽい」などの症状がみられるようなときは、もの忘れ外来などを受診しましょう。脳を十分に活性化させて、認知症を予防
軽度認知障害であれば認知症に移行しないように、すでに認知症と診断された人は病状の進行を防ぐために、
また、今は問題ないけれど将来認知症にならないために、ぜひ心がけたいのが脳を少しでも多く働かせることです。
例えば、運動は脳の活性化に役立ちますが、同時にしりとりなどをすると、脳がより活性化することがわかっています。  

緑の美しい季節です。家に閉じこもってばかりいないで、お友だちとお出かけしませんか。
おしゃべりをしながらの楽しいお出かけは脳を十分に活性化させます。
なお、認知症についてわからないことがありましたら、お気軽に薬剤師にお尋ねください。

 

<イラストレーション>
堺直子